例えば相続した不動産に、大昔(明治、大正、昭和初期~50年代まで)の抵当権などが付いていて、
不動産を処分しにくくて困っている…。なんていうことはありませんか。
このような不動産は、抵当権が実行される恐れがあり、買主が購入を渋るため、
なかなか処分しづらいものです。
なんとか、抵当権を抹消する方法はないのでしょうか…?!
抵当権(厳密には抵当権設定登記)は、原則として不動産の所有者と抵当権者が一緒になって
登記所で抵当権を抹消する申請をしなくてはいけません。
登記上、抵当権を失う立場にある抵当権者を無視して抵当権を抹消することはできないからです。
しかしながら、このような大昔の抵当権の場合、抵当権者の人と協力して…
なんていうことは難しいですよね。
この様な場合における抵当権の抹消手続きとして不動産登記法は、
以下のような特例を設けて登記権利者による単独での抵当権抹消手続きを行えるようにしています。
① 既に完済した事を証明する書面(領収証など)を用いて法務局に抹消依頼する。
② 債権額に利息や遅延損害金相当の金額を加えたものを供託する。
③ 除権決定を得る。
④ 裁判を起こして抹消する という4つの方法が用意されています。
4つも方法があるのか!なんだ簡単じゃん!!なんて思う方もいらっしゃるかと思いますが、
それぞれの手続きには良いところと悪いところがそれぞれありますので
適切な方法を考えていかなければなりません。
例えば、①の方法について説明させていただくと
こんな昔の抵当権の対象となっている借金の完済を証明することは大変難しいですよね。
(結果として抵当権が実行されていないことから完済されていることは何となく予想はつきますが)
②の供託を行う方法については、借金の金額が小さければよいのですが、
何百万という金額だと、供託金を準備すること自体なかなか難しいですよね。
また大前提として、これらのいずれの方法を取る場合でも、
抵当権者が「行方不明」である必要があります。
ここでいう「行方不明」とは、担保権登記名義人の現在の所在も死亡の有無も不明の場合をいいます。
例えば、登記名義人が死亡したことは判明しているが、その相続関係が分かっている場合は、
相続人が登記義務者となるため、行方不明にはあたりません。
したがって先ほど列挙した4つの方法で抹消を行うにあたっては、
「行方不明」であるかが、まずは重要なポイントとなってきます。
このような事態が起こるのは、所有権の移転や抵当権の設定に比べ、担保権の抹消登記については、
債権者も債務者も権利意識が低いこと(借金の返済もってお互いに満足してしまう)が
背景にあると考えられ、その結果として担保権の登記が長年放置されてしまうようです。
将来自分の財産を引き継ぐ大切な誰かの手を煩わせないためにも、
こういったことにも高い意識を持っていたいものですね。